令和8年4月、三重産業保健総合支援センター主催の産業保健研修会にて、産業医・保健師の先生方を対象に、「働く人の健康を守る不眠対策」をテーマに講演を行いました。
今回の講演では、単なる「眠れない」という症状への対応だけではなく、
- 労働災害
- ヒューマンエラー
- 長時間労働
- 夜勤
- メンタルヘルス
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)
- 復職支援
など、企業活動に直結するテーマについて、産業医実務の視点からお話ししました。
実際に企業で産業医活動をしていると、睡眠の問題は「個人の生活習慣」だけでは片付けられないと感じる場面が非常に多くあります。
むしろ、
- 安全管理
- 労務管理
- 健康管理
- 生産性
- メンタルヘルス
に深く関係する、“企業として向き合うべき課題”になっているケースも少なくありません。
「眠れない社員がいる」ということは、企業にとってどういう意味を持つのか
不眠というと、本人のつらさに目が向きがちです。
もちろん、それ自体も非常に重要です。
しかし実際には、睡眠不足や睡眠障害は、
- 労働災害
- 車両事故
- 作業ミス
- 集中力低下
- 生産性低下
- メンタル不調
- 休職や離職
などとも強く関係しています。
特に製造業、運送業、建設業などでは、睡眠問題が重大事故につながる可能性もあります。
実際によくある相談
実際の産業医面談でも、
- 最近ミスが増えてきた
- 昼間に強い眠気がある
- 寝ても疲れが取れない
- 夜中に何回も目が覚める
- 朝起きても全く回復感がない
といった相談を受けることがあります。
一見すると単なる疲労や睡眠不足のようにも見えます。
しかし、詳しく確認していくと、
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)
- うつ病
- 強いストレス状態
- 長時間労働
- 夜勤による概日リズムの乱れ
などが背景に隠れているケースも少なくありません。
実際の現場では、「眠れない」という相談の背景に、複数の問題が重なっていることも非常に多い印象があります。
長時間労働だけではない「現代型不眠」
以前は、不眠というと長時間労働や強いストレスが中心でした。
しかし最近は、働き方の変化によって睡眠問題の形も変わってきています。
在宅勤務による生活リズムの乱れ
在宅勤務では通勤がなくなる一方で、
- 終業時間が曖昧になる
- 夜遅くまで仕事をしてしまう
- ベッドの近くで仕事をする
- スマートフォンやPCを見る時間が長くなる
といった状況が起こりやすくなります。
その結果、睡眠と覚醒のメリハリが崩れ、慢性的な不眠につながるケースも増えています。
管理職で比較的多い「寝酒」
産業医面談で比較的多いのが、
「お酒を飲まないと眠れない」
という相談です。
本人としては眠るために飲んでいる感覚なのですが、アルコールは実際には睡眠の質を低下させ、中途覚醒を増やすことがあります。
特に、
- 管理職
- 営業職
- 責任負荷の高い職種
では、このパターンを見かけることが少なくありません。
産業医が見逃してはいけない「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」
今回の講演でも特に強調したのが、睡眠時無呼吸症候群(SAS)です。
SASは単なる「いびき」ではありません。
- 日中の強い眠気
- 集中力低下
- 居眠り運転
- 高血圧
- 心血管リスク
などにつながる可能性があります。
特に、
- 運送業
- 製造業
- 建設業
- フォークリフト作業
- 高所作業
など、安全面への配慮が重要な職場では、見逃してはいけない疾患の一つです。
実際に、産業医面談で「眠気」をきっかけに詳しく確認した結果、重度SASが見つかったケースもあります。
産業医は「眠れているか」ではなく「安全に働けるか」を見る
産業医として不眠を評価するとき、重要なのは単純な睡眠時間だけではありません。
本当に重要なのは、
「その状態で安全に働けるか」
という視点です。
例えば同じ「眠れない」という訴えでも、
- デスクワーク中心
- 夜勤あり
- 運転業務あり
- 危険機械作業あり
では、就業上のリスクが全く異なります。
そのため産業医は、
- 日中の眠気
- 集中力低下
- ヒヤリハット
- ミス増加
- 作業内容
などを総合的に確認しながら評価していきます。
不眠対応は「睡眠薬」だけではない
一般的には「不眠=睡眠薬」というイメージを持たれることもあります。
しかし現在では、睡眠衛生指導やCBT-I(認知行動療法)の重要性も非常に高くなっています。
例えば、
- 起床時間を一定にする
- 夜間のスマホを減らす
- 寝酒を減らす
- ベッドで仕事をしない
- 昼寝を長くしすぎない
といった生活調整だけでも改善するケースがあります。
一方で、
- うつ病
- 双極性障害
- SAS
- 強いストレス状態
などが背景にある場合には、医療機関との連携が必要になることもあります。
企業にも求められる「睡眠問題への向き合い方」
最近は、
- 人手不足
- 高齢化
- メンタル不調増加
- 安全配慮義務への意識向上
などにより、企業側にもより高度な健康管理体制が求められるようになっています。
睡眠問題は、本人任せでは限界があります。
だからこそ企業としても、
- 長時間労働
- 夜勤
- メンタルヘルス
- 安全管理
を含めて、全体として対応していくことが重要です。
当社の産業保健支援について
株式会社吉川労働衛生コンサルタント産業医三重事務所では、精神科経験のある産業医としての視点に加え、労働衛生コンサルタントとして、
- 労働安全衛生法対応
- 職場巡視
- リスクアセスメント
- 化学物質管理
- 安全配慮
なども含めた支援を行っています。
また、
- 長時間労働面談
- 高ストレス者面談
- 復職支援
- 健診事後措置
- メンタルヘルス対応
- 衛生委員会支援
なども、実際の企業運営に合わせて対応しています。
近年は、
「今の産業医が形式的になっている」
「メンタル対応まで踏み込めていない」
「安全面まで見てほしい」
というご相談をいただく機会も増えています。
最後に
不眠は、どの企業でも起こりうる問題です。
そしてその背景には、
- 長時間労働
- 夜勤
- ストレス
- メンタル不調
- SAS
など、さまざまな要因が関係しています。
だからこそ、単なる「睡眠の問題」として扱うのではなく、
「安全に働けるか」
「企業としてどう支えるか」
という視点で考えることが重要です。
今回の講演内容が、少しでも企業の健康管理や安全管理を考えるきっかけになれば幸いです。
産業医選任や産業保健体制についてのご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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