はじめに:6月病という“見えにくい不調”
新年度から約2か月。ようやく生活リズムが整い始めた頃に、なんとなく気分が落ち込み、仕事に対する意欲が低下する——このような「6月病」に悩む社員が増えています。
これは医療的な正式名称ではありませんが、新入社員や異動・転職直後の従業員によくみられる一種の適応障害、あるいはうつの初期段階とも言える状態です。
この時期のメンタル不調を放置すると、休職や離職といった重大な結果に繋がることも。企業としても「メンタルヘルス対策の盲点」として注意が必要です。
第1章|6月病が起こりやすい理由
6月病の背景には、次のような複合的な要因があります:
- 新しい人間関係への疲労・緊張
- 配属後の業務負荷増加
- 長期休暇が取りづらく、気分転換できない
- 梅雨による天候不良・日照不足が心身に影響
特に新入社員や中途採用者、部署異動を経験した従業員は、目に見えないプレッシャーや孤立感を抱えやすくなっています。
第2章|産業医・労働衛生コンサルタントの視点でみる予防策
労働衛生の立場から、6月病への対応は「早期気づき・早期対応」が鍵です。産業医・労働衛生コンサルタントは、以下のような支援が可能です。
✅ 1. ストレスチェックの活用
厚労省が義務化するストレスチェック制度を活用し、「なんとなく不調」な社員の傾向を把握できます。特に集団分析を用いた職場単位の傾向把握が有効です。
✅ 2. 定期的なヒアリング・面談
本人が不調を自覚しないケースも多いため、6月前後に重点的なフォローアップ面談を実施することが望ましいです。
✅ 3. 健康経営・職場環境改善
「心理的安全性の高い職場づくり」や、オンボーディング支援なども含めて、構造的にメンタル不調を予防できる職場設計が求められます。
第3章|“6月病”の根本対策には仕組みが必要:EAPという選択肢
ストレスチェックや産業医面談は、企業におけるメンタルヘルス対策の基本ですが、6月病のような「なんとなくの不調」や早期のメンタル不全には十分にアプローチしきれないケースが少なくありません。
なぜなら、多くの従業員は以下のような理由から、社内で相談することをためらうからです:
- 「相談できる場がない」
- 「会社に知られたくない」
- 「メンタル不調を話すのが怖い」
このような心理的ハードルの高さが、不調の長期化や、職場でのパフォーマンス低下、離職リスクの増加を招いています。
こうした課題に対し、いま注目されているのが
**EAP(Employee Assistance Program=従業員支援プログラム)**です。
EAPは、企業が外部の専門機関と連携し、従業員が無料かつ秘密厳守で相談やカウンセリングを受けられる制度です。特に“6月病”のように、軽度の不調が進行する前に対処するためには、**社内とは異なる「第三者相談窓口」**の存在が不可欠です。
EAPを導入することで、企業側は以下のようなメリットを得られます:
- 早期相談・早期介入により、重症化や休職を予防
- 外部相談により、社内では把握しづらい個人的・家庭的要因への対応が可能
- 人間関係や法的トラブルなど、多面的なストレス要因に対応可能
EAPは従業員にとって**「安心してアクセスできる支援インフラ」であり、企業にとっては「見えないリスクを可視化し、職場の健全性を守る仕組み」**です。
第4章|EAPの活用と、弁護士が関与することで得られる企業メリット
当社では、EAPの枠組みの中に、精神科経験豊富な産業医、労働衛生コンサルタント、そして提携弁護士の介入が可能な体制を整えています。
特に、ハラスメントや業務上のトラブル、SNSでの誹謗中傷など法的要素が絡むメンタル不調では、産業医のみでは対応が難しく、弁護士の介入が非常に効果的です。
✅ 弁護士介入のメリット
- 初期対応が適切になり、トラブルの拡大を防止
- 労務トラブルの予防・対応を法的に正確に行える
- 公正な第三者の存在により、従業員との信頼性が向上
✅ 「費用が高くなるのでは?」という懸念への回答
弁護士の関与は、EAPのオプション機能として必要に応じて提供されるものです。
基本的なカウンセリングや相談は無料の範囲で完結することが多く、
弁護士の関与も短期・限定的にとどまるため、トラブルの予防によって総合的なコスト削減が実現できます。
第5章|EAP導入の費用と補助制度について
💡 EAP導入にかかる費用
- カウンセリング契約(月額定額/従量制)
- コンサルティング・教育研修(オプション)
- 弁護士・医師など専門家の個別対応(スポット契約)
💡 企業にもたらす“費用以上の価値”
- 離職・休職リスクの軽減
- 採用コスト・教育コストの削減
- 職場の安全性・信頼性の向上
- 健康経営の推進とブランディング効果
おわりに:6月こそ、メンタルヘルスの強化月間に
「なんとなくの不調」にこそ、会社としての対応力が問われます。6月病への気づきと、EAPをはじめとする支援体制の整備は、従業員の健康と企業の持続性の両方を守る投資です。
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監修:株式会社吉川労働衛生コンサルタント産業医三重事務所 代表取締役 産業医/労働衛生コンサルタント 吉川 諒 【対応エリア】三重県を含む東海地方、近畿地方ほか全国対応可
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