梅雨の時期は、気温と湿度の上昇により、カビやダニの繁殖が活発になりやすく、職場環境の悪化や健康トラブルが起きやすくなります。
特に「シックビルディング症候群(SBS)」や「過敏性肺炎」といった疾患は、気付かぬうちに職場内で健康障害を引き起こす可能性があります。
この記事では、産業医・労働衛生コンサルタントの視点から、職場で注意すべきカビ・湿気対策と、それに伴う健康リスク管理、さらに健康経営に向けた具体的な取り組みまで解説します。
1. 梅雨時期の職場環境とカビ発生の要因
梅雨期の高湿度環境では、職場内に以下のような条件がそろうことでカビの繁殖が加速します:
- 室内湿度が60%以上になる
- 空調や換気が不十分
- 結露しやすい窓際や地下フロア
- 給湯室・更衣室などの水回り
🔍 補足:建築物環境衛生管理基準との関係
厚生労働省の「建築物環境衛生管理基準」では、相対湿度は40〜70%が目安とされています(参考資料)。
一方、カビは60%を超えると活動が活発化するため、カビ対策としては50〜60%未満を目標に湿度管理することが推奨されます。これは実務上の安全管理策として重要です。
2. 湿気・カビが引き起こす健康影響とは?
シックビルディング症候群(SBS)とは?
建物内の空気環境が原因で、目のかゆみや喉の痛み、頭痛、倦怠感などの多様な不定愁訴が現れる症状群です。建材や家具からの化学物質、カビやダニ、換気不足が原因とされ、特定の病名がつかない体調不良として現れます。
過敏性肺炎とは?
カビや有機粉じんを繰り返し吸い込むことで肺にアレルギー性の炎症が起こる病気です。慢性化すると咳、息切れ、発熱などの症状が持続し、労働生産性の低下や長期療養を要することもあります。
3. 産業医としての視点:健康リスクの評価と対応
✅ 健康アンケートの実施
職場環境に起因する症状を把握するために、以下のようなアンケートを定期的に実施すると効果的です:
- 職場で咳・鼻水・皮膚のかゆみを感じた経験はあるか?
- 特定の部署や時間帯で症状が現れるか?
- 自宅や在宅勤務との体調の違いはあるか?
- 目や喉の刺激、集中力の低下などの体感はあるか?
💡 匿名・自由記述を含めることで、通常報告されにくい不調を拾い上げやすくなります。
🫁 呼吸機能検査の導入(任意)
健康経営や予防的健康管理の一環として、**呼吸機能検査(スパイロメトリー等)**を任意で導入する企業も増えています。
シックビルディング症候群や過敏性肺炎のリスク評価においても、呼吸機能の定量的把握は有効です。
呼吸機能検査のメリット:
- 呼吸器系の症状の早期発見
- 環境改善後の効果測定
- 健康経営や従業員満足度向上の施策として活用
- 就業制限が必要な従業員への配慮材料としても有用
🏢 実施例としては、健康経営を推進する企業が挙げられます。
4. 職場でできるカビ・湿気対策
- 室内湿度は**40~60%**を目安に管理
- エアコンの除湿機能や除湿器を活用
- 定期的な換気(自然+機械換気の併用)
- 空調フィルターやダクトの清掃・交換
- 壁際・水回り・カーペットの点検と清掃
- 結露・漏水の早期発見と修繕
- CO₂モニターや湿度センサーの活用で環境の「見える化」
5. 衛生委員会や産業医の役割
衛生委員会や産業医は、以下のような支援を行うことで、職場の健康リスク管理に貢献します:
- 健康アンケート設計・分析
- 呼吸機能検査の導入助言
- 湿度・換気管理の適正化に関する技術的支援
- カビ・ダニ等に関する啓発活動
- 感受性の高い従業員への個別就労配慮
✉ ご相談・お問い合わせ
カビや湿気による職場環境への対策、従業員の健康配慮、呼吸機能検査の導入に関するご相談、 産業医業務依頼、労働衛生コンサルタント業務依頼などのお問い合わせはこちら
監修:株式会社吉川労働衛生コンサルタント産業医三重事務所 代表取締役 産業医/労働衛生コンサルタント 吉川 諒 【対応エリア】三重県を含む東海地方、近畿地方ほか全国対応可
コメント