雨の日の通勤災害リスクと安全配慮義務の留意点

「雨の日の通勤と安全対策」

― 労働衛生コンサルタント・産業医の視点から解説 ―

はじめに

6月は梅雨の時期。雨による通勤時の転倒事故や交通事故が増加する季節です。
労災認定される通勤災害のリスクは高まり、同時に企業としての安全配慮義務にも注意が必要です。
本記事では、通勤災害の基本、法的観点、企業が取るべき予防措置について、労働衛生コンサルタントおよび産業医の立場から整理します。


通勤災害とは? 労災認定の基本を押さえる

労働者災害補償保険法(労災保険法)では、業務災害とは別に「通勤災害」が定義されています。

  • 通勤災害の定義(労災保険法第7条)
     労働者が「就業に関し」「合理的な経路および方法」で通勤中に被った負傷・疾病・障害・死亡のこと

ポイントは以下の通りです:

  • 通勤の途中での転倒事故や交通事故も補償対象となる
  • 経路を逸脱・中断すると原則として対象外(例外あり)

雨天時における通勤災害リスクの特徴

【1】滑りやすい路面による転倒事故

  • 濡れた階段やタイル歩道、駅構内などは高リスク
  • 高齢の従業員や体調不良者は特に注意が必要

【2】交通機関の遅延・混雑による焦り・事故

  • 焦りによる不注意運転、電車・バスでの転倒など

【3】自転車・バイク通勤者の事故率上昇

  • 濡れた路面でのスリップ事故が多く、重大事故につながることも

企業に求められる「安全配慮義務」とは

企業は、労働契約法第5条に基づき、「労働者の生命・身体等の安全を確保するよう配慮する義務(安全配慮義務)」を負います。

【実務的な義務の例】

  • 気象状況を踏まえた通勤方法の見直し
     → 「大雨警報時の在宅勤務許可」や「時差出勤の促進」
  • 通勤災害に関する教育・注意喚起
     → 衛生委員会での啓発や、イントラネットでの注意喚起
  • 自転車通勤の管理と制限
     → 自転車通勤許可制を導入し、雨天時は代替手段を推奨

これらはすべて「安全配慮義務」の一環と位置づけられます。怠れば企業の法的責任が問われる可能性もあります。


衛生委員会での活用ポイント(専門職向け)

6月の衛生委員会では、以下のような議題が適しています:

  • 雨天時の通勤災害リスクと具体的対策の提案
  • 事故報告事例の共有と水平展開
  • 通勤方法に関する調査(アンケートなど)の実施
  • 安全な通勤に関するガイドライン(社内基準)の整備

労働衛生コンサルタントや産業医としては、企業に制度的・実務的支援を行い、現実的かつ法的に妥当な対策を助言することが重要です。


まとめ:企業と従業員の双方を守るために

通勤災害は「自己責任」で終わらせるべきものではありません。
企業の制度設計と教育、そして産業医・衛生管理者・労働衛生コンサルタントとの連携が、安全な職場づくりの鍵を握ります。

株式会社吉川労働衛生コンサルタント産業医三重事務所では、通勤災害リスクへの対策提案や衛生教育の支援、社内体制構築のアドバイスなどを承っております。
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監修:株式会社吉川労働衛生コンサルタント産業医三重事務所                          代表取締役 産業医/労働衛生コンサルタント 吉川 諒                             【対応エリア】三重県を含む東海地方、近畿地方ほか全国対応可

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この記事を書いた人

労働衛生コンサルタント/日本医師会認定産業医
株式会社吉川労働衛生コンサルタント産業医三重事務所 代表取締役
労働衛生の専門家として、企業における職場環境の改善や従業員の健康管理に携わり、これまで多くの事業所の産業保健活動を支援。
労働衛生コンサルタントおよび日本医師会認定産業医としての資格と精神科での臨床経験を活かし、医学的知見と現場感覚の両面から実効性のあるアドバイスを行っています。
三重県を拠点に、東海地方の企業様に対して、誠実かつ現実的なサポートをモットーに活動中。東海地方以外の依頼にも対応しています。
法令順守だけでなく、“従業員が安心して働ける職場づくり”を目指した、実践的な産業保健サービスの提供を心がけています。

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